Rusie Dutton
ルーシーダットンとは
タイの伝統的 自己整体健康法
ルーシーダットンは、タイに約2500年前から伝わる伝統的な自己整体健康法です。
タイ教育省・保健省も正式に認める伝統医学の一つです。親しみやすくするために「 タイ式ヨガ 」と呼ばれることもあります。簡単なポーズが多く、身体が硬い人でも安心して行えます。
ルーシー( 仙人・修行僧 )ダッ( 身体を整える )トン( 自分 )という意味で、その昔修行僧が厳しい修行の合間に疲れた身体を整えるために行った体操です。
タイの寺院「 ワット・ポー 」には、ルーシーダットンを行う修行僧の像が現在も残っています。
他のヨガとの違い
「 タイ式ヨガ 」と呼ばれるルーシーダットンですが、これは親しみやすくするために呼ばれるようになったもので、インド式のヨガやピラティスとは目的や呼吸法が違います。
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ルーシーダットン:疲れた身体を元に戻す自己整体(体操)
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ヨガ:サンスクリット語で「つながり」の意味 心と体が調和するための修行
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ピラティス;体幹を鍛えるトレーニングで健康的な身体作りやリハビリ
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ルーシーダットン:完全呼吸法(胸腹式呼吸法)
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ヨガ:腹式呼吸法
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ピラティス:ラテラル(横方向)呼吸法
ルーシーダットンの呼吸法
ルーシーダットンで大切なのは、その独自の呼吸法です。腹式呼吸と胸式呼吸を合わせた「 完全呼吸法 」で行います。
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ポーズをとりながら5秒くらいかけて鼻からゆっくり息を吸います
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胸、お腹が膨らむようなイメージで空気を溜めます
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そのまま3秒ほど呼吸を止めます
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ポーズを解きながら5秒くらいかけて口から勢いよく「 シューッ 」と吐きます(バッドエナジーを吐き出す)
呼吸を止めたり、口から勢いよく吐くのは、他のヨガには無い特徴です。
ルーシーダットンの効果とは
血液・リンパの流れを促進
身体の調子を整える上で、血液やリンパの流れは非常に重要です。
ルーシーダットンの呼吸法は、いったん呼吸を止めるという独自の呼吸法で行います。
大きく呼吸をしたまま息を止めるとリンパ管に圧がかかり、息を吐き出すと圧が弱まります。この動作を繰り返すことで滞っていたリンパの流れを促進します。
また、息を止めると脳は酸素が減少していると錯覚し、動脈が開いて多くの血液を脳に運ぼうとします。その結果、酸素を含んだ血液が通常以上に循環し、血流が良くなります。血流が良くなると身体の隅々まで栄養素が行き届き、自然治癒力や免疫力も高まります。
他には、大きな呼吸をすることで肋骨が良く開き、肋骨の間にある筋肉(肋間筋)に柔軟性が生まれます。
肋間筋が硬く、浅く小さな呼吸になっている人は、肋骨の間を押すと痛みを感じると思います。肋間筋の柔軟性が改善されると、常に大きな呼吸が出来るようになり酸素を多く取り入れられるようになります。
脳疲労の改善
脳が疲労していると神経の伝達が鈍り、身体の各器官への指令がうまく出せなくなり、様々な体調不良が起こります。
感情のコントロールをする「セロトニン」、「ノルアドレナリン」、「ドーパミン」といった脳内神経伝達物質の分泌にも影響が出て、精神的に不安定な状態にも陥ってしまいます。
また、理解力や記憶力、集中力も低下してしまいます。
ルーシーダットンの呼吸法により、脳への血流が良くなることで脳の疲労回復が促進されます。
これは脳生理学のエビデンスに基づいたものと言われており、脳の疲労を改善することは、心身ともに健康的になるためにたいへん重要なことです。
脳疲労が改善されると
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自律神経が整い、イライラや不安感が緩和される
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不眠が改善され、睡眠の質が向上
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記憶力や集中力が上がる
身体の歪みを整える
最近では長時間のパソコン仕事やスマホの見過ぎで悪い姿勢のまま筋肉が拘縮してしまい、身体の色々な個所が不調になるケースも増えています。
強張って硬くなった筋肉に骨格が引っ張られると、身体に歪みが出てきます。
ルーシーダットンは、その独自の大きな深い呼吸法により自律神経が整い、筋肉を強張らせている神経を落ち着かせ、血流を促進させて酸素を多く取り込みながら、身体を動かして筋肉をストレッチするといった一連の動作で歪みを改善していきます。
身体をニュートラルな状態に戻すことで、様々な不調が緩和されます。
「 セン 」とは
生命エネルギーが流れる経路
タイ古式マッサージ同様、ルーシーダットンにおいても重要視されるのはこの「 セン 」と呼ばれるものです。
センは生命のエネルギーが流れるラインで、身体にはこのセンの主要なラインが10本あるとされていますが、これはインド医学が基本となっているものす。
ルーシーダットンは、このセンを意識しながら伸ばしたり軽くさすったりします。
エネルギーが通っているかどうかは目で見ることは出来ませんが、実際にセンを刺激すると様々な効果が表れます。東洋医学の「 ツボ 」と重なる場所も多い為、呼び名や刺激方法が違ってもその効果は期待できると言えるでしょう。
解剖学的な「 セン 」
重要視される「 セン 」ですが、抽象的で非常に分かりづらいものです。
しかし「 セン 」と呼ばれる場所を解剖学的に見てみると、骨格と筋肉の間であったり、筋肉と筋肉の間であったり、リンパ管や血管が集まる場所であることが非常に多いことが分かります。
抽象的と思われる「 生命のエネルギーが滞りなく流れる 」とは、この「 セン 」を意識しながら刺激することで、血流やリンパの流れを促進し、多く取り込んだ酸素で自律神経が整い、筋肉の緊張がほぐれ、身体の歪みが改善され、不調が緩和されていくという意味なのではないでしょうか。